- 「かけがえのない」についてのお話 (3) -
教室で聴こえる音すべてを作品に
それまでは、私の中ではまだ、演奏する時の音世界のイメージを抽象的にしか想像できておらず、自然が感じられる懐かしい場所で演奏できて、その時の 嬉しい気持ちがこもっていれば、楽曲の世界に入っていけると思っていた部分が大きかったのですが、田辺玄さんが、音のイメージを正確に想像して下さったおかげで、教室で聴こえる音すべてを作品にすることができたのです。
そして、ミックス・マスタリングにあたっても、田辺玄さんとのやりとりは深いものがありました。
今作の場合、情景があってこその音楽であるため、歌や楽器の音を伝えるためだけのものではない、という思いが共通し、音楽全体を伝えるための音源として、 歌や楽器それぞれを中心にすえるのではなく、もっと全体での、その時教室で響く音と、教室の外で鳴る音とのつながり・広がり・ふくらみを大事にし、その時のその環境で心地よく聴こえている音楽の全体を広くとらえることに、注力いたしました。
歌ものの作品である場合、歌を中心に整音することが多いと思いますが、今作は、そうではありませんでした。
楽器の音と、歌声と、周りで響いている音が、まんべんなく境目なく自然につながっていることが、できるだけ伝わるように、整音していただいております。よりいっそう身近な、遠い記憶をくすぐる、なつかしい音楽として記録されたと思っています。
私に関わって下さった方みなさまに、そして、この作品に興味を持って下さったみなさまにも、改めて感謝の思いを申し上げます。本当にありがとうございます。
< 前のページ 「かけがえのない」についてのお話(2)