「かけがえのない」についてのお話

- 「かけがえのない」についてのお話 (2) -

やっと出会えた、京都府南山城村「旧田山小学校」と「cafe ねこぱん」

自然ゆたかな田舎の学校で、ピアノがあるような場所はないか、と全国を視野に探していて、なかなか思うような場所が見つからず、困っていた際、友人に教えてもらったとあるギャラリーのブログで、「南山城村、旧田山小学校内にあるcafeねこぱんには、ピアノがある」ということを知り、「ピアノがある、村の廃校」まさに思い描いていたような場所だ、と直感し、真っ先にコンタクトを取らせていただいたのが、cafe ねこぱんの永尾寿子さんでした。

見ず知らずの私のことを、快く受け入れて下さり、今回の録音ご協力の中心となって下さいました。

cafeねこぱん店内の様子
cafeねこぱん店内の様子
cafeねこぱん店内の様子

旧田山小学校は、1875年創立で、2003年に廃校となってしまいましたが、その後2009年7月に、cafeねこぱんが開業されました。現在はその他にも、工芸作家さん・現代美術作家さんの工房・ギャラリーがあったり、村特産の茶葉による、「南山城紅茶」の生産も、この校舎内で行われています。

学校は、平屋建ての木造校舎ですが、とても手入れが行き届いていて、この学校で過ごしたたくさんの方たちが、ずっと丁寧に、大事に使ってこられたのだろうな、と思いました。

使い込まれて、味わい深く滑らかなつやの出ている、木の床・柱・壁など……机やいすも、ほとんど当時のまま残されています。中庭には、小さな池、様々な木々。水道の蛇口や、下駄箱、校庭もそのまま。二宮金次郎像があったり、大きな桜の木が植えられています。

静かな村の、素朴であたたかな学校。そんな環境と、それをいかしてこれからも大事にしていこうとしている方々の存在が、私の音楽をさらにゆたかにしてくれました。

旧田山小学校の廊下
旧田山小学校の中庭

cafeねこぱんのピアノ

cafeねこぱんのピアノ

ピアノは、cafeねこぱんさんが、お店にピアノがあったら素敵だな、と思われて、お知り合いから譲り受けた、Atlas社製・40歳くらいのアップライトピアノでした。

つまり、もともとこの学校にあったものではないのですが、古いものをこれからも大事に使い続けていこうとしている方たちとの出会いの中で、このピアノはここにやってこられたわけで、偶然の出会いなのにしっくりこの場になじんでいるのが印象的なピアノでした。

きっと、このピアノも大事にされてきたのかもしれない、と思うほど、優しい音色を響かせてくれるピアノでした。

そして、当初、私はカフェで演奏して録音させてもらおうかと思っていたところ、録音エンジニアの田辺玄さんの提案で、カフェの隣に教室があったので、 cafeねこぱんの皆様にご協力を頂き、そちらへピアノを運ばせていただき、録音することになりました。

完全に教室のまま残っている空間だったので、ますます懐かしく穏やかで、少し寂しげな空気さえも感じられる空間で、ますます私らしい音楽を表現できる一番の場所を提供して頂けました。